
腐乱軒に母親と住み込みで働く少女、北島ヤマ。
ある日彼女は、出前の途中に発見した新しい雀荘に寄り道をしてしまう。
「おじさーん、一人だけど入れるー?」
タキシードを着た店員が答える。
「ちょっと待ってくれれば、入れると思うけど」
「そんなあー、牌の音を聞きながらおとなしく待ってるなんて私には出来ないわー!!」
「女子高生だからって、何でも甘えれば道理が通る思てたら大間違いやぞ」
「あっ。じゃあ、あそこの空いてるところで一人でやってってもいい?」
「一人で? そ、そりゃ、いいけど…」
ヤマは、ひとりで麻雀を始めた。
「何だよー、それアタリじゃねぇのかよ!! バカヤロー、俺なんか上がってたのを崩したんだぜー。」
「あちゃー!!」
「しまったあ、こいつだー!!」
「あ、アレは何だ!!(その隙に牌を出す)」
「あたあー!! 見のがせよ、テメー。可愛くねぇぞー!!」
「さっきから、俺ばっか、ねらってねェか? わかったよ、うまいのはわかったよ、いくら? ウソだろー!!」
「おメェもみれんたらしく、山めくってんじゃねェよ。俺がアンコってんだよ」
客達が不思議そうな目でヤマを見つめる。
「何やってんだ、あの娘は」
その言葉をさえぎって、ベレー帽にサングラスをかけた髭面の男が叫んだ。
「い、いや。わしには見えるぞ。いないはずの、他の三人が!!」
別の客もつぶやく。
「わ、私にも見える!!」
「上家は初心者の幼なじみ、下家は面前で手作りをしようとする無口な奴、対面はポーカーフェィスで一人勝ちしている同級生…」
「そして、そいつはひそかに彼女のことを恋していて、足がちょっと臭い奴だ!!」
その様子を、雀荘の窓から覗いている黒いドレスを着た髪の長い、そして恐い顔をした一人の女がいた。
「見つけたわ!!」
「とうとう見つけたのよ、私の宝を!! オーッホホホホ」
「だれか、ケーサツに電話しろー」
その雀荘は、ビルの二階にあったのだった。
恐い顔の女の正体は、長い間芸能界を離れていた星影千草。
自分が持っている野望のために、ピッタリの少女を捜していたのだった。
その数日後…。
下落合ニュープリンスホテルで、星影千草による記者会見が行われようとしていた…。